念願の独立&起業を果してはみたけれど
当初の思いとは裏腹に、うまくいかないことが重なって
メンタルの不調を訴える起業家は残念ながらとても多いようです。
現に、このようなデータもあります
起業家の37%が、気分障害・不安障害の基準を満たしている(一般人の7倍)」
「起業家の49%が、生涯に一度はメンタルの問題を抱える」引用 ゼロベース株式会社
せっかく長年の夢をかなえたのにもかかわらず
心を病んでしまっては元も子もありません。
そこで、ここでは起業家のメンタルを損なう大きな6つの要因を明らかにするとともに
「起業家うつ」を撃退する5つの処方箋について解説してまいります。
1.起業うつに陥る6つの要因
起業家はメンタルヘルスの問題を抱えやすく、その問題を持続させやすいと
言われています。
そこには単純ではない、起業家特有の要因が関係しています。
その要因を大きく6つに分類して、それぞれをみていきます。
1-1.責任と不確実性
起業家が抱える外的なストレス要因は大きいといえます。
特に、利害関係者が増えれば増えるほど、精神的な重圧は増えていきます。
計画通りに事業が進捗しなかったり、資金繰り、組織内のいざこざや
製品へのクレームなどあらゆる不測の事態が発生します。
そしてそれだけの不測の事態を乗り越えたとして
「成功する確約」はどこにもないことも多いといえます。
来月どうなるか分からないという不確実性も
精神的負荷を高めることになっていきます。
1-2.孤独感
経営を続ける中で、信頼していた役員や従業員への期待が裏切られたり
仲間だと考えていたメンバーとの対立するといった場面と
出合うことは多いものです。
そんな経験から傷つき「だんだん他人に期待をしなくなった」という
経営者の話をよく耳にすることがあります。
他人に依存しない姿勢は経営者の「強さ」のようにも見えますが
「本当に信頼できるのは自分だけ」という孤独感と裏腹でもあります。
過度の孤独感はメンタルを蝕んでいきます。
1-3.夫婦・家庭関係
経営者向けのカウンセリングサービスの相談の中で
最も多く見られる相談内容は、「夫婦関係、家族関係」であった。
という話があります。
経営者、特に立ち上げ初期の起業家にとっては
「全ての心身のエネルギーを仕事に注ぐ」という傾向が大きいために
家庭の優先順位が必然的に下がってしまい
すれ違いが生じるケースが多いようです。
また、経営者によく見られる自由志向や合理的思考を前提とした場合に
不自由で親密な関係性を維持することが難しくなってしまう場合もあります。
夫婦・家族関係が不和であるということは
すなわち「家に帰っても癒される場所がない」ということになり
これが職場における孤独感にますます拍車をかけることになるでしょう。
1-4.起業家ならではの性格特性
「起業」という不測の事態を伴う環境に自ら飛び込もうとする人たちには、
それを可能にする「起業家ならではの性格特性」があるといえます。
特に、フットワークの軽さや創造性、柔軟性などの性格特性は
環境に適応していれば起業家の強みとして事業の拡大を支える重要な特性になります。
ただし、それが生かせる環境や他者との関係性がなければ
その特性はむしろ社会的不適応となり
精神的不安定さや周囲とのあつれきを生むことにつながります。
起業家的な特性とメンタルの疾患は、紙一重のところにあるといえるでしょう。
下記のような調査報告があります
UC Berkeleyの調査によれば
ADHD(注意欠陥・多動性障害)の生涯罹患率は起業家で29%、一方の対照群で5%。
躁状態とうつ状態を繰り返す双極性障害は起業家で11%、対照群で1%。
薬物やアルコールなどへの依存は、起業家で12%、対照群で4%。
いずれの精神疾患においても、起業家の罹患率は著しく高い。引用 DIAMOND ONLINE
*この場合の対照群は起業家以外の人たちです。
どの項目においても起業家の罹患率が高いのがわかります。
1-5.逃げ道がない
精神的負荷が高まって「もうだめだ、苦しい」となってしまったとき
一般の従業員であれば「休む」「転職する」という選択肢があります。
しかし、起業家は安易に「休む」「逃げる」という選択をするには
仕事が人生と結びつき過ぎていることが多く、困難な場合が多いでしょう。
特に、会社の経営が起業家のカリスマ性や能力に依存している場合には
なおさら、「休む」、「逃げる」という選択肢は取れなくなります。
だからこそ、限界まで苦しみ、逃げることができずに
抱え込んでしまうことになってしまいます。
特に経営者自身が不調や心の揺れを抑圧していることもあるので
自覚したときにはもう手遅れになっているケースが多いようです。
1-6.社会の目
メンタルヘルスの問題に対する社会の目は
10年前と比べると格段に改善したとはいえ
依然として優しいとはいえないのが現状です。
そのため、現在でも起業家にとって自身の不安感や揺らぎを
堂々と表明できる場所はほとんど用意されていません。
まだまだ一度失敗したものに対して寛容といえない現実があります。
「失敗者の烙印」を恐れるがあまり、自分自身をどんどん追い込み
社会に戻れなくなるという負のスパイラルに陥ってしまうのです。
2.起業家うつにならないための対策
それでは起業家うつに陥らないための対策についてお話していきます。
2-1.コーチ(メンター)を置く
嫌が上でも孤独感を味わうことの多い起業家ですから
心おきなく語れるコーチ(メンター)を置くことをお勧めします。
これは、うつ病にならないためというよりも、会社や事業を良くするためと
考えたほうが良いかもしれません。
良いコーチ(メンター)を置くことができれば
メンターがあなたの異変や、リスクになりそうなことを
事前に指摘をしてくれますので
心強い味方になってくれます。
2-2.自分のやりたいことをやる
これは実際に起業する前の準備段階で行って欲しいのですが
自己棚卸しをして、「自分の好きな事」、「できること」、「得意な事」を
徹底的に掘り出したうえで、
心底自分のやりたいことを事業の柱にするようにしてください。
「なぜこの仕事をするのか」が明確であれば、簡単には心が折れないからです。
実際に事業展開する段階では心底自分のやりたい事とは違う形で
スタートするかもしれませんが、軸がしっかりしていれば多少の困難も跳ね返す
メンタリティが備わっています。
2-3.拡大しない
これは特に50代から起業を志す方にお伝えしているのですが
むやみに拡大しようとしないことです。
従業員なども雇わず自分一人で完結するビジネス展開をしていけば
不測の事態に遭遇する確率は格段に下がります。
拡大しようとすることは、同時にリスクを背負うことです。
社会の目は意識せずに、自身の価値観を大切にする
経営スタンスでやっていきましょう。
2-4.息抜き、リフレッシュできるものを持つ
起業は本当に長い戦いになります。
たまには息抜き、リフレッシュをしましょう。
おすすめなのが物理的なルールを決めてしまうことです。
例えば週一回は必ず美味しいものを食べに行くとか、
自分の打ち込める趣味の時間を必ずとる
などと、いったようなものをルーティン化してしまうのです。
私は手書きでマインドマップを書くことが
メンタルの安定につなっがているようです。
「マインドマップだと仕事の延長じゃないか」と言われそうですが
手書きなので、センターイメージを必ず書くようにしています。
そのセンターイメージへ色付けすることが
「大人のぬりえ」と同じ効果があるようで
思考が整理されると共に、メンタルも安定するので、はまっています。
息抜きできる何かをルーティン化しましょう。
2-5.撤退ルールを決めておく
もしもこうなったら、事業をやめようとか、もっと小さい規模にしようなど
撤退をはじめとするルールを客観的に決めておきましょう。
事業はギャンブルではありません。
撤退のラインやルールを決めていないと、
儲かる見込みがなくても追加でお金をかけてしまったり
なによりも、無駄に精神を消耗してしまいます。
こんな時は、やっている当事者は当たり前に客観性を失ってしまいます。
そうならいためにも
起業する前などに撤退の基準をルール化しておくことをおすすめします。
ずるずるやらなければ、再起も復活も早くできます。
ダメなものにさっさと見切りをつけるのも経営者としてのセンスです。
まとめ
起業家うつに陥る6つの要因をあきらかにしたうえで
対処すべき5つの処方箋について解説してまいりました。
6つの要因とは
- 責任と不確実性
- 孤独感
- 夫婦関係、家族関係
- 起業家ならではの性格特性
- 逃げ道がない
- 社会の目
以上の要因を理解したうえで
- コーチ(メンター)を置く
- 自分のやりたいことをやる
- 拡大しない
- 息抜き、リフレッシュできるものを持つ
- 撤退ルールを決めておく
この5つの処方箋を実践していってください。
そのうえで、何よりも自分で自分を追い込まないような状況を
常に作るようにしましょう。
この文章を読んでいただいてありがとうございます。